ワリキリサイトで知り合ったバルちゃんは、僕の家にリュックを背負ってやって来た。
そして上がり込むなり、「コーヒー飲まれますか?」と、その中身をキッチンに広げた。中にはドリッパーやサーバーなどの器具が入っていた。
コーヒーは嫌いではないし、断る理由もない。ただ、いきなりすぎるにも程がある。
「バリスタになりたいんですよね」
コーヒー色の肌をしたバルちゃんは、自分でブレンドしたと言うコーヒー豆をミルで挽きながらいろいろと話してくれた。
バルちゃんの親はモルモン教徒であり、カフェイン摂取が禁じられている宗旨ゆえに、高校生になるまでコーヒーを飲んだことがなかった。
ただ、バルちゃん自身は宗教には興味がなく、学校帰りに友達と寄ったハンバーガーショップで、コーヒー初体験をしたそうだ。
すると「こんなおいしい飲み物があったのか!」と、初めての味覚に感動して、すっかりコーヒーに傾倒してしまったらしい。
「それが親にバレちゃって、そこからは大ゲンカですよ」
芳醇な香りを漂わせ始めたコーヒーを間にして、バルちゃんはすらりと伸びた手でポットから慎重にお湯を注いでドリップしながら、そう言った。
コーヒーがきっかけで家庭内不和になり、家出を繰り返しながらもようやく学校を卒業して、今はコーヒーショップでアルバイトをしながら、こうしてたまにワリキリサイトに通って、海外渡航の資金を貯めているそうだ。
ワリキリの意味
「イタリアに行って本場のエスプレッソを研究してみたいんですよね」
そう言って彼女が煎れてくれたバルちゃんブレンドは間違いなく美味しかった。
僕は違いのわかる男でも何でもないが、いつも飲んでいる缶コーヒーとは味のふくらみが全然違うことは明白だ。
美味しいよと言うと、バルちゃんは頬を紅くして喜んでくれた。
「いつかは、お父さんとお母さんにも私のコーヒーを飲んでほしいんですけどねえ・・・無理かなあ」
ベッドの中でバルちゃんは僕の腕に抱かれながら、ぽつりとつぶやいた。
コーヒーを飲んでもらうことは無理かもしれない。でも、親に飲ませてあげたいと言うその優しい心はきっと伝わるはずだ。
僕たちは、コーヒーの香りが残るくちびるで熱いキスをした。
援デリ
センズリ鑑賞のプチ援